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【プロフィール】
自動車研究家山本 シンヤ(やまもと しんや)自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」として活動を行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。プリウスPHVを所有し、ハイブリッドカーに対する知識や経験も多い。
ハイブリッド車の仕組みを知ろう
エンジンとモーターを併用したシステム
ハイブリッド車とはガソリン/ディーゼルなどのエンジンに電動モーターを組み合わせた動力源を搭載したクルマのことです。
エンジンは燃料を燃やしてタイヤを回転させるエネルギーを得るクルマの心臓ですが、低速走行、特に『走って・止まって・また走って』など短い間に力を大きく出し入れするシーンを苦手とします。言うなれば、街の中よりは高速道路のように一定の速度で走ることが本来は得意なのです。
ちなみに、ガソリンに対してディーゼルは、同じエンジンの大きさであればより強い力を得られるので、燃費に優れ、走りやすいのが特徴です。しかし、ガソリンのように高回転までエンジンが回らないため、走りの爽快感がやや弱いと一般的には言われています。
そういった得手不得手がある中で、電気モーターは電気を流した"瞬間"から、ディーゼルに匹敵するような大きな力を得られるのが最大の魅力。しかし、それは低速や中速走行時の特性で、高速走行時はその力強さは発揮できなくなってしまいます。
そこで万能的な動力源を求めて「高速走行を得意とするガソリンエンジン」と「低速、中速走行が得意な電気モーター」を組み合わせたハイブリッド車が誕生し注目を集めたのです。しかも、モーターは加速時に力を発揮するだけでなく、減速時にはクルマが動いている力を電気に変換してバッテリーに蓄え、その電気を次の加速で使うというエネルギーのリサイクルができます。
これによりハイブリッドは燃費まで優れ、万能的な動力源へと進化を続けています。
ハイブリッドシステムの種類
ハイブリッドと言ってもさまざまなシステムがあります。
1.パラレル方式
エンジンがメイン。発進時や加速時など力が必要という時、モーターは縁の下の力持ちのように状況に応じてエンジンを適宜アシスト。構造がシンプルで大きな搭載スペースを必要としないので、軽自動車をはじめ多くのモデルに採用されています。
2.シリーズ方式
エンジンを発電機として使用。タイヤを回す力は全てその電気によるモーター駆動が担う。平たく言うと「自家発電式の電気自動車」というイメージです。モーターに依存して走るので電気自動車の分類となり、街乗り優先のモデルが中心となっています。
3.シリーズパラレル方式
1と2、両方のシステムを組み合わせたもの。エンジンは発電/駆動と両方をこなし、モーターは走行/発電の両方をこなす複雑な機構です。エンジンとモーターの両方を効率的に使いながら走れるだけでなく、モーターのみの走行も可能としています。シリーズ方式、パラレル方式の良いとこどりの性能で、独特な乗り味です。
車両タイプ別のオススメ車種
コンパクトカーのメリットは燃費性能の向上
いろいろな車両タイプで、ハイブリッド車が存在します。ライフスタイルにあったハイブリッド車を選ぶために参考となる情報をオススメ車種とともにご紹介いたします。
コンパクトカー:トヨタ ヤリス / ホンダ フィット
街乗りが多いコンパクトカーにおけるハイブリッドのメリットはやはり燃費性能の向上です。
モーターパワーが頼もしいミニバン
ミニバン:トヨタ シエンタ / ホンダ ステップワゴン
エンジンの力にモーターの力をプラスすることで余裕の動力性能と省燃費を両立。多人数でもパワフルに走ります。ハイブリッドならではの頼もしさを実感。
SUVとハイブリッドは相性バツグン!
SUV:三菱 エクリプスクロス / トヨタ RAV4 / 日産 エクストレイル
活動範囲が広く、オンロード/オフロード問わず力強い走りを求めるSUV。電子制御4WDなら、さらに高効率になります。街乗りメインで乗るなら燃費性能が良いハイブリッドがオススメ。
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三菱エクリプス クロス
迫力ある外観が印象的なクロスオーバーSUV。居住性の高い空間と低燃費ながらパワフルな発進・加速・登坂と目を見張る走行性能が魅力。
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トヨタRAV4
シリーズパラレル方式+電動4WDのオールラウンダー。2.5リッターエンジンとモーターの組み合わせにより高速走行時の加速は爽快でパワフルながら、室内は驚くほど静か。
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日産エクストレイル
コストパフォーマンスで選ぶならシンプルなパラレル方式もオススメ。1つのモーターと2つのクラッチを組み合わせた独自開発のハイブリッドシステム導入により、パワフルな高速走行と優れた燃費性能、高い加速性を実現。
ハイブリッドで味わうセダンの魅力
セダン:トヨタ プリウス / トヨタ カムリ / 日産 スカイライン
経済性、そしてモーター駆動による余裕の動力性能や静粛性を得ることができ、走りの楽しさを深く味わえます。
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トヨタプリウス
低燃費のハイブリッドカー。包みこむような乗り心地、低重心スタイルで安定した走り。専用通信機器DCM搭載で先進のコネクティッド機能も。
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トヨタカムリ
自然なフィーリングと強さを備えた完成度の高いシリーズパラレル方式が魅力。上質でありながら、実は隠れスポーツセダンとも言える仕上がり。
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日産スカイラインセダン
3.5リッターV6+1モーターのパラレル方式。モーターだけでも走れるのが特徴。超強力な加速性と静粛性を両立。同一車線であれば"ハンズオフ"走行を実現する世界最高水準の運転支援システム「プロパイロット2.0」搭載。長距離も快適にこなせる。
ハッチバックやワゴンも余裕の加速力
ハッチバック&ワゴン:トヨタ カローラツーリング / ホンダ シャトル / スバル クロストレック
ハイブリッドならではの余裕の加速力を楽しめます。ハッチバックなどでハイブリッド搭載により室内や荷室は少し狭くなっていることがありますが、比較的バランスのとれている車種をご紹介いたします。※クロストレックはクロスオーバーSUVですが、ここでは使い勝手という観点でハッチバックの位置づけです。
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トヨタカローラツーリング
インパネまわりのスイッチ類も使いやすく、ストレスなく操作できる。包みこまれるようなシートは疲れにくく、乗り心地が良い。長距離も楽に走れてドライビングを楽しめる。
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スバルクロストレック
人のからだに合わせて考えられた構造は新しい世代に向けたコンパクトSUVを体現。先代のXVから踏襲した5ドアハッチバックスタイルに個性が光る。細部にこだわった機能性の高さと充実した安全装備に注目。
軽自動車の小さい排気量をカバー
軽自動車:三菱 eKクロス / 日産 デイズ / スズキ スペーシア
軽自動車には2種類のハイブリッドが存在します。1つは簡易パラレル式と表現したいマイルドハイブリッドで、電気モーター単独走行はできないものの電気モーターによるエンジンアシストがあり加速力の向上を感じられます。もう1つはストロングハイブリッドと呼ばれる、電気モーターによるエンジンアシストもあり、電気モーター単独走行も可能なものです。初めての車をハイブリッド車の軽自動車で探しているのであればパワフルに走れるターボはオススメです。高速や登坂での走行に余裕を感じられるはず。
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三菱ekクロス
全車にモーターがエンジンをアシストする新ハイブリッドシステムを採用。軽やかな発進と加速が感じられる。スムーズな足回りや乗り心地は街乗りを存分に楽しめそう。
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日産デイズ
スマートシンプルハイブリッドシステム搭載、ボディの軽量化や優れた空力性能を発揮するデザインなど高い燃費性能の向上を実現。
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スズキスペーシア
減速時のエネルギーを利用して発電し、加速時のエンジンアシストに使うマイルドハイブリッド。アイドリングストップ時の再始動も支援。高い燃費性能が期待できる。
ハイブリッド車の選び方 まとめ
車両タイプ別にハイブリッド車をご紹介してきました。
ハイブリッドと一口にいっても複数の方式が存在し、さまざまな要素が構成され新しい動力を生み出しています。ハイブリッド車というと『トヨタ プリウス』をイメージする人は多いと思いますが『電気で動くモーター』と『ガソリンで動くエンジン』、この2つを動力源とするものを一般的にハイブリッド車と呼んでいます。話題のプラグインハイブリッド車は、自宅のコンセントを使って充電ができ、停電や災害の時には外部電源として使うことができます。「あまり給油をしなくても走れる車がほしい」「街乗りメインだから低燃費の車にこだわりたい」という方にハイブリッド車は最適といえるでしょう。
メーカーや車種によって、ハイブリッドシステムそれぞれに特性の違いがあります。まずは「どんな乗り方をしたいのか」を軸にした車選びから始めてみてはいかがでしょうか。
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