カーリースの仕訳は取引方式によって異なる!仕訳方法や勘定科目を解説

個人事業主・法人がカーリースを利用する場合は利用料を経費で落とせますが、その際は仕訳が必要になります。仕訳方法は現金一括払いやローンで車を購入する場合とは異なるので注意しなければいけません。今回は、カーリースを利用する場合の仕訳方法を中心に解説します(※本記事の内容は2024年8月時点の情報です)。

カーリースの仕訳方法を取引方式別に解説

カーリースの仕訳をする男性

カーリースには3つの取引方式が存在し、それぞれ仕訳方法が異なります。

  • 所有権移転外ファイナンス・リース取引
  • 所有権移転ファイナンス・リース取引
  • オペレーティング・リース取引

各方式の違いを説明した上で、仕訳方法を紹介します。

所有権移転外ファイナンス・リース取引の仕訳方法

「所有権移転外ファイナンス・リース取引」は、中途解約できず、契約期間中のメンテナンスは利用者が費用を負担しなければいけない方式です。契約満了時にリース商品をもらうことはできず、利用者は返却、再リース、買取りのいずれかを選択します。日本のリース会社の多くが「所有権移転外ファイナンス・リース取引」を採用しています。

この方式では、契約時、リース料金支払い時、決算時に以下のような仕訳が必要です。

(例)一括払いで購入すると300万円かかる普通車を、月額6万円の5年払い(計60回払い)でリース契約した場合(支払い総額360万円)

契約時の仕訳

借方 貸方
リース資産3,000,000円 リース債務3,000,000円

リース料金支払い時の仕訳

借方 貸方
リース債務50,000円 普通預金60,000円
支払利息10,000円

*支払利息の計算方法

(リース料の支払い総額3,600,000円-一括購入時の支払い総額3,000,000円)÷60回払い=10,000円/月

決算時の仕訳

借方 貸方
減価償却費600,000円 リース資産600,000円

減価償却とは、車両や機械といった資産を取得した場合に、その資産の経過年数に応じて価値が目減りしていく分を一定期間または割合で経費計上していくというルールです。日常的に使うペンなどの安い消耗品は購入時に一括で経費計上できますが、下記、すべての条件に当てはまるものは、"減価償却費"として資産の耐用年数に応じて計上していく必要があります。

  • 業務で使用する資産
  • 時間の経過とともに劣化していく資産
  • 耐用年数1年以上
  • 取得価額が10万円以上(青色申告者で条件に当てはまる場合は30万円以上)

減価償却費の計算は基本的に「定額法」または「定率法」で行いますが、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」の場合は「リース期間定額法」を用いるのが一般的です。計算式は以下のとおりです。

(リース期間定額法を用いた減価償却費)

リース資産3,000,000円÷リース回数60カ月×事業年度12カ月=600,000円/年

なお、減価償却費は利用期間に応じて計上する金額が変わるため、たとえば初年度に6カ月のみ使用した場合は上記計算例の事業年度を6カ月にして計算する必要があります。

所有権移転ファイナンス・リース取引の仕訳方法

「所有権移転ファイナンス・リース取引」は、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」と同様に中途解約不可でメンテナンス費用は利用者負担ですが、異なるのは契約満了時にリース商品をもらえる点です。

この方式では、契約時とリース料金支払い時の仕訳は「所有権移転外ファイナンス・リース取引」と同様ですが、決算時の仕訳が異なります。

(例)一括払いで購入すると300万円かかる普通車を、月額6万円の5年払い(計60回払い)でリース契約した場合

契約時の仕訳

借方 貸方
リース資産3,000,000円 リース債務3,000,000円

リース料金支払い時の仕訳

借方 貸方
リース債務50,000円 普通預金60,000円
支払利息10,000円

決算時の仕訳

借方 貸方
減価償却費500,000円 リース資産500,000円

「所有権移転ファイナンス・リース取引」は契約時点でリース商品が利用者のものになることが決まっているため、減価償却は車をローンで購入する場合と同じ「定額法」または「定率法」のいずれかで計算します。計算方法はいずれか好きな方を選べますが、今回はよりシンプルな「定額法」で算出します。計算方法は次のとおりです。

(定額法を用いた減価償却費)

【リース資産3,000,000円÷リース資産の耐用年数6年(72カ月)】×事業年度12カ月=500,000円/年

ちなみに、車の耐用年数は車種や新車/中古車によって以下のように異なります。

(新車の場合)

  • 普通車:6年
  • 軽自動車:4年

(中古車の場合)

  • 購入した時点で法定耐用年数が過ぎている中古車:法定耐用年数×20%
  • 法定耐用年数を過ぎていない中古車:(法定耐用年数ー購入時点での利用年数)+(購入時点での利用年数×20%)

なお、計算結果が2年未満になる場合、法定耐用年数は2年とみなします。

オペレーティング・リース取引の仕訳方法

「オペレーティング・リース取引」は、契約内容によっては中途解約が可能で、契約期間中のメンテナンス代はリース会社が負担する方式です。契約満了時は、リース商品の返却が必須となっています。一般的な「残価設定されているカーリース」は、こちらの取引方式に該当する可能性があります。

「オペレーティング・リース取引」では、リース料金の支払い時にのみ、以下の仕訳を行います。契約時や決算時の仕訳は不要です。

(例)一括払いで購入すると300万円かかる普通車を、月額6万円の5年払い(計60回払い)でリース契約した場合

リース料金支払い時の仕訳

借方 貸方
リース料60,000円 普通預金60,000円

カーリースの仕訳、こんな時はどうする?

カーリースの仕訳方法で悩む男性

ここではカーリース利用時、次の場合にどのような仕訳をすればいいのか解説します。

  • 頭金を入れる場合
  • 中途解約をする場合
  • 個人事業主がプライベートと仕事の両方で車を使う場合

頭金を入れる場合の仕訳

カーリース利用時に、頭金を支払う場合の仕訳方法を見てみます。

(例)一括払いで購入すると300万円かかる普通車を、月額5.5万円の5年払い(計60回払い)でリース契約した場合(最初に頭金を30万円入れる/オペレーティング・リース取引と仮定)

契約時の仕訳

借方 貸方
前払費用300,000円 普通預金300,000円

リース料金支払い時の仕訳

借方 貸方
リース料55,000円 普通預金55,000円

決算時の仕訳

借方 貸方
リース料60,000円 前払費用60,000円

頭金を入れた場合は「前払費用」として資産に計上し、決算時にリース料などで費用化します。前払費用は、決算時に契約期間で分割して計上していくのが基本となります。今回の例では頭金30万円、契約期間は5年なので、30万円÷5年=6万円となります。

なお、もし契約した年の車の使用期間がたとえば4カ月なら、下記のように初年度の決算では2万円、2年目以降の決算からは6万円を計上していきます。

初年度:(6万円÷12カ月)×4カ月=2万円
2年目以降:30万円÷5年=6万円

中途解約した場合の仕訳

オペレーティング・リース取引は、契約内容によっては中途解約可能な場合もあります。ただし、その際は違約金(解約金)が発生してしまう可能性があります。

中途解約をして違約金が発生した場合、未払いリース料を「リース解約損」、未払いリース料の消費税部分を「仮払消費税」、違約金を「雑損失」として以下のように仕訳します。

(例)未払いリース料80万円、違約金10万円(税抜経理方式/オペレーティング・リース取引)

借方 貸方
リース解約損800,000円 普通預金980,000円
仮払消費税80,000円
雑損失100,000円

なお、違約金の有無や金額はリース会社によっても異なります。未払いのリース料金のみを支払えば違約金は不要な会社もあり、その場合は上記の違約金にあたる「雑損失」の仕訳はなくなります。

個人事業主がプライベートと仕事の両方で車を使う場合の仕訳

個人事業主は、カーリースする車を自家用と社用で兼用する人も多いと思います。その場合は全額経費にするのではなく家事按分が必要です。家事按分とは、支出が私用と事業用で混同する場合、事業で使用する割合のみを計上する方法です。

(例)カーリースの月額料金が3万円、使用割合が仕事:プライベート=6:4

上記の場合、30,000円×0.6=18,000円のみを計上して、取引方式に合った方法で仕訳します。

個人事業主・法人がカーリースを利用する場合の費用面や仕訳上のメリット、注意点

個人事業主・法人がカーリースを利用する場合の費用面・仕訳面でのメリット・デメリットを伝える女性

ここまでカーリースを利用する場合の仕訳方法を紹介しましたが、ローンを組んで車を購入する場合と比べて、カーリースはほかに費用面や仕訳上でどのようなメリット・注意点があるのか、みていきましょう。

メリット①毎月一定の支払いで突発的な出費を防げる

カーリースの月額料金には車両代、各種税金、自賠責保険代などが含まれています。車を維持するのに必要なコストが最初から含まれているので、月ごとの支出額の変動を抑えることができます。

メリット②節税効果が高い

社用車をカーリースにすれば、毎月の利用料を全額経費にすることができます。

一方、ローンで購入した場合、経費にできるのはローンの支払利息のみです。ローン会社から借りた元金は負債として計上しなければいけないので、経費にはできないのです。

毎月の支払額を全額経費にできるのはカーリースの大きなメリットといえるでしょう。なお、先ほどもお伝えしたとおり、個人事業主がプライベートと仕事の両方で車を使う際は、家事按分した上で経費計上することを忘れないでください。

メリット③車を購入するよりも仕訳が簡単になる

車をローンで購入すると、下記のように勘定科目が増える上、仕訳も複雑化してしまいます。

  • 車両代金→車両運搬具
  • 各種税金→租税効果
  • 自賠責保険→保険代
  • リサイクル料金→リサイクル預託金または前払費用
  • 減価償却→減価償却費

カーリースなら月額料金内に諸々含まれているので、仕訳も簡単ですし、オペレーティング・リース取引なら減価償却の計算をする必要もありません。

注意点①走行距離制限を超えると、契約満了時に追加料金が発生する

カーリース利用時に注意しなければいけないのは、多くのリース会社が走行距離制限を設けている点です。契約満了時に制限をオーバーすると、超過した分の追加料金が発生してしまいます。車を仕事で頻繁に利用する人は、事前に年間走行距離をシミュレーションした上で、自身に合った距離を選ぶようにしてください。

注意点②中途解約をした場合は違約金が発生する

カーリースは原則として中途解約が認められていません。

利用者が死亡や入院など車を利用できない状況になったときは、例外として解約可能なケースもあります。しかし、そのような場合でも違約金が発生してしまいます。

多くのリース会社は、違約金の金額を「残りの契約期間×月額料金」としています。たとえば、9年契約で月額料金2万円、4年が経過した時点で解約した場合、残りの契約期間5年分(60カ月分)の料金120万円を一括で支払う必要があります。

そのような事態にならないためにも、契約時は将来のライフプラン等を考慮した上で、自分に合った契約期間や月額料金を選ぶことが大切です。

注意点③残価設定を下回った場合は差額分を支払わなければいけない

一般的なカーリースでは契約時に「残価」を設定します。カーリースの残価とは、契約満了時における車の想定価値のことです。契約満了時にその車にどれくらいの価値が残っているのか、車種や走行距離、契約年数などをもとにリース会社が算出します。

車両を返却する際、実際の価値が残価を下回っていると差額分を追加で支払わなければいけません。カーリースの月額料金が極端に安い場合などはこの残価が高く設定されている可能性もあるので、契約前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ:リース会社の取引方式を確認した上で、適切な仕訳をしよう

カーリースの仕訳方法を理解した男性

カーリースの仕訳方法は、下記3つの取引方式ごとに異なります。

  • 所有権移転外ファイナンス・リース取引
  • 所有権移転ファイナンス・リース取引
  • オペレーティング・リース取引

最も簡単なのは「オペレーティング・リース取引」で、月額料金を仕訳するだけ。面倒な減価償却も不要です。ただし、利用者が取引方式を選ぶことはできないので、気になる方は事前にリース会社へ確認しましょう。

なお、これから事業を始める方や経理に慣れていない方は、どのように仕訳をすればいいのか、どの勘定科目を使えばいいのかなど、わからない点も多いはずです。間違った申告をしていると、申告の修正やペナルティとして追徴課税を払わなければいけなくなるおそれもあります。正確な税務処理をするためにも、カーリース利用時は税務署や税理士に一度相談することをおすすめします。

竹内一生

【プロフィール】
竹内 一生2016年より専業Webライターとして活動開始。企業のWebメディアでSEO記事を中心に執筆中。一次情報を元にした正確な情報収集、ペルソナが求める情報の抜粋、読みやすく簡潔な文章作成を得意とする。車関連では、エイチームの「ナビクルcar」で2年の執筆経験あり。

お役立ちコラム一覧へ